三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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185 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:16:03.21 ID:LZSY7jKs.net
「だけど俺、ひどいことしたよね?」
「うん、ショックだった。いっぱい泣いたさ」
「だったら、そんなやつとは別れたほうがいいだろ?」
「そんなねー、論破するようなこと言ったってねー、私がM君を好きだって気持ちは、M君には変えられないよ?」
「だけど別れてもいいと思ってるんだろ?」
「そうだね。私が付き合いたいのは、私のことを好きなM君だから。
M君が私のこと嫌いって言うのなら、しかたないよ、ここですっぱり別れよう。
だから、私はM君の気持ちを聞きたいんだよ。私のこと好きなのか、嫌いなのか」
189 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:28:47.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺は…」
そのまま、M君は黙り込んだ。
私も黙ってM君の言葉を待った。
隣の部屋から、やけに上手な「冬のリヴィエラ」が聞こえてきた。くそったれーと思った。
190 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:29:03.43 ID:LZSY7jKs.net
そして、小一時間は経ったかなというころ。
「………俺のわがままに、喪子を付き合わせるわけにはいかないから」
やっと出たM君の言葉はそれだった。
また、聞こえがいいだけのただの正論。中身のない、空っぽな言葉だった。
192 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:31:11.58 ID:LZSY7jKs.net
「言ったでしょ。それはM君のせいじゃない、私の選択だよ?」
「だけど俺のせいで、喪子の時間を奪ってしまうのは…俺には責任がとれない」
「私の人生の責任は、私がとります」
「だけどそれで、喪子の出会いのチャンスを潰してしまったら…」
「勝手な想像で勝手に私の将来潰さないでよ、ムカつくなー!」
M君はまた黙り込んだ。相変わらずうつむいてたけど、口をパクパクさせてた。
なにか言おうとして言えないでいるみたいだった。なんか酸欠の金魚みたい。
まるでそうしないと生きていけないみたいに口をパクパクさせてM君は私に反論しようとしている。
なんだか、それを見ていたら、急に思ってもなかった言葉が出てきた。
193 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:32:19.42 ID:LZSY7jKs.net
「もうさー、そんなに自分を誤魔化さなくってもいいんだよ! もういい、十分だよ!M君はこれまで、本当によくやったよ!」
事前に考えておいて、言おうと思ってたことはまだまだあった。でもこれを言ったら「言い尽くしたなー」と思えた。
私が我慢するとか、諦めるんじゃくてさ。
固まったように動かず、しゃべることもできないでいる彼を見ているうちに これはもう、M君の変えようのない生き方なんだなあって、いきなり納得できた。
だったら そんな彼の人生に、皮肉でもなんでもなく、せめて「天晴れ」と言ってあげたくなったんだ。
「…これで私の言いたいことはおしまいです。あとはM君次第だよ」
「…………ごめん、別れよう」
それがM君の答えだった。
194 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:33:19.99 ID:LZSY7jKs.net
「うん、わかった。いままでありがとうね」
「ごめん」
「えー、最後がごめんはやだなー。なんか他のこと言ってよw」
「…………ごめん」
あのとき変わりたいと私に言ったM君は、他でもない、自分に負けてしまった。何よりも彼自身が、それを嫌というほど自覚している。
M君は、うつむいてると言うよりうなだれていた。その姿にじわっと涙が出てきて、それを隠して荷物をまとめた。
195 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:35:05.70 ID:LZSY7jKs.net
だっけどさー! マンガや映画だったら ここで終わりなのにさー!
そこから二人で廊下歩いて行かなきゃならないんだよねー。
そのあとは、受付でお会計もしなくちゃならないのよ、現実は。
しかもカウンターで、よくあるあの儀式がはじまっちゃってさ。
「俺が」
「呼び出したんだから、私が」
「いいから」
「せめて割り勘で」
「ほんとにいいから」
196 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:07.34 ID:LZSY7jKs.net
M君の顔に似合わないゴツい手が、私の手をお財布ごとバッグに押し戻した。
「一緒にケーキ食べられなかったお詫び。ずっと気になってたから」
ケーキ? 私、今日ケーキ食べるなんて言ってないよね???
………………あーーーー。
涙腺が緩んで、私は小走りで店の外に出た。
197 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:39.32 ID:LZSY7jKs.net
M君は甘党で、特にケーキが大好きだった。
他の食べ物はあんまりでも、ケーキだけには身を乗り出した。
だからよく、二人でケーキ買ったり作ったりして食べてたんだ。
でも、そうだ。いちばん最初のケーキだけは、一緒に食べられなかったんだっけ…
なんでそんなこと、いま言うんだよう。ずっと気にしてたなんて、馬鹿だなあ。
…でも、M君らしいや。
198 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:00.73 ID:LZSY7jKs.net
店から出てきたM君に、私は駐車場のあっちのほうからべっこり頭を下げた。
泣き顔は見られたくなかったんだ。
M君がどんな顔してたかはわからない。
視界が歪んでたからね。
バイバイ、M君。
終わったー、私の恋。
199 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:25.06 ID:LZSY7jKs.net
それからは、いろんな人に報告しまくった。
そうすることで気持ちに整理をつけたかった。
湿っぽいのはいやなので、「これは空元気だよ!」とか言いながら。
だけど、やっぱりSさんのときだけは、少し泣いてしまった。
「そのうちご飯食べにきてくださいね」とだけSさんは言ってくれた。
でも積極的に行く気にはなれなかった。だってSさんのダンナはM君の親友だから。
M君の気配のあるところには、しばらく近づきたくなかった。
200 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:14.83 ID:LZSY7jKs.net
それから半年くらいかな。
私は落ち込んだ気持ちを引きずるでもなく、わりと普通にすごしていた。
最後に言いたいこと言えたせいか、後悔や未練はほとんどなかった。
そんなある日、部屋で優雅にスルメをしゃぶっていたら、携帯が鳴りだした。
んー?名前が表示されてないなあ
知らない人からの電話には出ませーん
なんかしつこいねー、頑張れー
…………………あはん!?
「もっ、もしもし!」
「もしもし、あのー、Mですが」
「どうしたの!?元気だった!?私は元気だよ!どうしたの!?元気!?私は元気!」
軽くパニクってましたすいません。
「そっか、ならよかった」
久々に聞けたM君の「そっか」が嬉しかった。
201 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:54.82 ID:LZSY7jKs.net
「いま大丈夫かな?」
「大丈夫だよー」
スルメ食ってただけですから。
「えーと……ごめん、出てもらえないと思ってたんで、あせってるな」
独り言みたいにM君が言った。
「大丈夫だよー、落ち着くまで待つから」
「ごめん。えーと…あー、いまなにしてた?」
「それを聞くか!?」
「あ、ごめん」
なんか「ごめん」ばっかだなー。
202 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:17.87 ID:LZSY7jKs.net
「ユーミンの歌であったよね。あなたと別れてからはキレイでいようとしてたのに どうして私、今日に限ってサンダル履き!?ってやつ」
「ああ、あったね」
「スルメ食ってました」
「スルメwwww」
あー、笑ったあ〜。スルメ、グッショブ。
「それで?突然どうしたの?」
「あのー………じつは伝えたいことがあって」
「えー、なに?」
「うん………それで電話したんだけど」
「えー、なになに?」
「ええと………じつは…さ…」
M君は電話の向こうで深呼吸してるみたいだった。それを聞いてたら、私もドキドキしはじめた。
203 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:43.94 ID:LZSY7jKs.net
「あのー、俺さ」
「うん」
「俺さ、俺………えー…あのー………ね」
「うん?」
「あれなんだよ、ええと……そのー……俺さ」
「うん」
「えーーーーー」
「うーーーー?」
「…………………ああ…やっぱだめだ話せない…」
「話したくないなら無理しないでいいじゃんw」
「話したくないわけじゃない。わざわざ電話したんだし…ただ、頭ん中真っ白になっちゃって…なにも言葉が出てこない」
「だけど俺、ひどいことしたよね?」
「うん、ショックだった。いっぱい泣いたさ」
「だったら、そんなやつとは別れたほうがいいだろ?」
「そんなねー、論破するようなこと言ったってねー、私がM君を好きだって気持ちは、M君には変えられないよ?」
「だけど別れてもいいと思ってるんだろ?」
「そうだね。私が付き合いたいのは、私のことを好きなM君だから。
M君が私のこと嫌いって言うのなら、しかたないよ、ここですっぱり別れよう。
だから、私はM君の気持ちを聞きたいんだよ。私のこと好きなのか、嫌いなのか」
189 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:28:47.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺は…」
そのまま、M君は黙り込んだ。
私も黙ってM君の言葉を待った。
隣の部屋から、やけに上手な「冬のリヴィエラ」が聞こえてきた。くそったれーと思った。
190 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:29:03.43 ID:LZSY7jKs.net
そして、小一時間は経ったかなというころ。
「………俺のわがままに、喪子を付き合わせるわけにはいかないから」
やっと出たM君の言葉はそれだった。
また、聞こえがいいだけのただの正論。中身のない、空っぽな言葉だった。
192 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:31:11.58 ID:LZSY7jKs.net
「言ったでしょ。それはM君のせいじゃない、私の選択だよ?」
「だけど俺のせいで、喪子の時間を奪ってしまうのは…俺には責任がとれない」
「私の人生の責任は、私がとります」
「だけどそれで、喪子の出会いのチャンスを潰してしまったら…」
「勝手な想像で勝手に私の将来潰さないでよ、ムカつくなー!」
M君はまた黙り込んだ。相変わらずうつむいてたけど、口をパクパクさせてた。
なにか言おうとして言えないでいるみたいだった。なんか酸欠の金魚みたい。
まるでそうしないと生きていけないみたいに口をパクパクさせてM君は私に反論しようとしている。
なんだか、それを見ていたら、急に思ってもなかった言葉が出てきた。
193 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:32:19.42 ID:LZSY7jKs.net
「もうさー、そんなに自分を誤魔化さなくってもいいんだよ! もういい、十分だよ!M君はこれまで、本当によくやったよ!」
事前に考えておいて、言おうと思ってたことはまだまだあった。でもこれを言ったら「言い尽くしたなー」と思えた。
私が我慢するとか、諦めるんじゃくてさ。
固まったように動かず、しゃべることもできないでいる彼を見ているうちに これはもう、M君の変えようのない生き方なんだなあって、いきなり納得できた。
だったら そんな彼の人生に、皮肉でもなんでもなく、せめて「天晴れ」と言ってあげたくなったんだ。
「…これで私の言いたいことはおしまいです。あとはM君次第だよ」
「…………ごめん、別れよう」
それがM君の答えだった。
194 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:33:19.99 ID:LZSY7jKs.net
「うん、わかった。いままでありがとうね」
「ごめん」
「えー、最後がごめんはやだなー。なんか他のこと言ってよw」
「…………ごめん」
あのとき変わりたいと私に言ったM君は、他でもない、自分に負けてしまった。何よりも彼自身が、それを嫌というほど自覚している。
M君は、うつむいてると言うよりうなだれていた。その姿にじわっと涙が出てきて、それを隠して荷物をまとめた。
195 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:35:05.70 ID:LZSY7jKs.net
だっけどさー! マンガや映画だったら ここで終わりなのにさー!
そこから二人で廊下歩いて行かなきゃならないんだよねー。
そのあとは、受付でお会計もしなくちゃならないのよ、現実は。
しかもカウンターで、よくあるあの儀式がはじまっちゃってさ。
「俺が」
「呼び出したんだから、私が」
「いいから」
「せめて割り勘で」
「ほんとにいいから」
196 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:07.34 ID:LZSY7jKs.net
M君の顔に似合わないゴツい手が、私の手をお財布ごとバッグに押し戻した。
「一緒にケーキ食べられなかったお詫び。ずっと気になってたから」
ケーキ? 私、今日ケーキ食べるなんて言ってないよね???
………………あーーーー。
涙腺が緩んで、私は小走りで店の外に出た。
197 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:39.32 ID:LZSY7jKs.net
M君は甘党で、特にケーキが大好きだった。
他の食べ物はあんまりでも、ケーキだけには身を乗り出した。
だからよく、二人でケーキ買ったり作ったりして食べてたんだ。
でも、そうだ。いちばん最初のケーキだけは、一緒に食べられなかったんだっけ…
なんでそんなこと、いま言うんだよう。ずっと気にしてたなんて、馬鹿だなあ。
…でも、M君らしいや。
198 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:00.73 ID:LZSY7jKs.net
店から出てきたM君に、私は駐車場のあっちのほうからべっこり頭を下げた。
泣き顔は見られたくなかったんだ。
M君がどんな顔してたかはわからない。
視界が歪んでたからね。
バイバイ、M君。
終わったー、私の恋。
199 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:25.06 ID:LZSY7jKs.net
それからは、いろんな人に報告しまくった。
そうすることで気持ちに整理をつけたかった。
湿っぽいのはいやなので、「これは空元気だよ!」とか言いながら。
だけど、やっぱりSさんのときだけは、少し泣いてしまった。
「そのうちご飯食べにきてくださいね」とだけSさんは言ってくれた。
でも積極的に行く気にはなれなかった。だってSさんのダンナはM君の親友だから。
M君の気配のあるところには、しばらく近づきたくなかった。
200 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:14.83 ID:LZSY7jKs.net
それから半年くらいかな。
私は落ち込んだ気持ちを引きずるでもなく、わりと普通にすごしていた。
最後に言いたいこと言えたせいか、後悔や未練はほとんどなかった。
そんなある日、部屋で優雅にスルメをしゃぶっていたら、携帯が鳴りだした。
んー?名前が表示されてないなあ
知らない人からの電話には出ませーん
なんかしつこいねー、頑張れー
…………………あはん!?
「もっ、もしもし!」
「もしもし、あのー、Mですが」
「どうしたの!?元気だった!?私は元気だよ!どうしたの!?元気!?私は元気!」
軽くパニクってましたすいません。
「そっか、ならよかった」
久々に聞けたM君の「そっか」が嬉しかった。
201 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:54.82 ID:LZSY7jKs.net
「いま大丈夫かな?」
「大丈夫だよー」
スルメ食ってただけですから。
「えーと……ごめん、出てもらえないと思ってたんで、あせってるな」
独り言みたいにM君が言った。
「大丈夫だよー、落ち着くまで待つから」
「ごめん。えーと…あー、いまなにしてた?」
「それを聞くか!?」
「あ、ごめん」
なんか「ごめん」ばっかだなー。
202 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:17.87 ID:LZSY7jKs.net
「ユーミンの歌であったよね。あなたと別れてからはキレイでいようとしてたのに どうして私、今日に限ってサンダル履き!?ってやつ」
「ああ、あったね」
「スルメ食ってました」
「スルメwwww」
あー、笑ったあ〜。スルメ、グッショブ。
「それで?突然どうしたの?」
「あのー………じつは伝えたいことがあって」
「えー、なに?」
「うん………それで電話したんだけど」
「えー、なになに?」
「ええと………じつは…さ…」
M君は電話の向こうで深呼吸してるみたいだった。それを聞いてたら、私もドキドキしはじめた。
203 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:43.94 ID:LZSY7jKs.net
「あのー、俺さ」
「うん」
「俺さ、俺………えー…あのー………ね」
「うん?」
「あれなんだよ、ええと……そのー……俺さ」
「うん」
「えーーーーー」
「うーーーー?」
「…………………ああ…やっぱだめだ話せない…」
「話したくないなら無理しないでいいじゃんw」
「話したくないわけじゃない。わざわざ電話したんだし…ただ、頭ん中真っ白になっちゃって…なにも言葉が出てこない」
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