イケメン同期に振り回された俺の人生について語る
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78 :石黒@\(^o^)/:2016/02/18(木) 01:00:02.75 ID:SHhZ1Aus.net
世界が砂漠に覆われたまま、2010年が終わろうとしていた。
白石と知り合った春、白石の秘密を知った夏、白石との関係が変わった秋、白石と過ごした冬。
この一年は、ずいぶん白石に振り回されたものだ。
だが、この時点で俺は、気づいていなかったのだ。
2010年は、これから起きる騒動の序章だということに・・・。
■つづく■
80 :石黒@\(^o^)/:2016/02/18(木) 01:01:54.56 ID:SHhZ1Aus.net
長くてすみません!
1時になってしまったので、キリがいいここで一度離脱します!
もしスレが残ってたら、また続きみてやってください!
81 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/18(木) 01:11:08.50 ID:SHhZ1Aus.net
連投にお付き合いいただきありがとうございました!
コテだけ残していきます。
89 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 02:42:29.03 ID:TqjywQeV.net
先が気になる
92 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 07:53:22.16 ID:re1t7e/Y.net
続きが気になるぜよ
99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 18:19:51.96 ID:t5ygaINh.net
1は高確率で女だろうが触れない方がいいのか
117 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:16:22.60 ID:7U2DNARy.net
年が明けて、2011年1月中旬。
お正月気分もすっかり取れ、サバーク博士の仮面も取れたころ、俺は早苗と待ち合わせをしていた。
いや、俺たちは、というべきか。
早苗に新年にあけましておめでとうメールをしたときに、「白石が早苗に会ってみたいってよ」と口からでまかせを言ったら、「うそ!会ってみたい!」と思っていた以上に乗り気になってくれたので、新年早々、白石に頼み込んで口裏を合わせてもらい、三人で会うことになったのだ。
118 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:17:49.61 ID:7U2DNARy.net
白石おすすめのカフェで、三人でお茶をした。
早苗がおしゃれをしているのを見るのは久しぶりで可愛かったし、楽しそうに話すところを見るのも久しぶりで、懐かしい気持ちになった。
同時に、その笑顔は白石に向けられているという事実が、寂しくもさせた。
昔はこんな風に俺に笑いかけてくれたなぁ・・・もう過去なのか・・・と悲しくなった。
理由はなんであれ、会ってくれるんだから それにこしたことはない。
そんな軽い気持ちでセッティングしたんだが、少し後悔していた。
まさか、おかしな関係にならないよな?
119 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:18:39.11 ID:7U2DNARy.net
白石を見て、気づいたことがあった。
常に笑顔を絶やさないし、本当に細かいところに気がつく。
そりゃ俺とふたりでいるときも笑顔だし いつも気が利くんだけど、冗談を言ったりスネたり、子どもっぽい一面も見せることがあるんだが。
そうか、白石のことをよく知るまでは「上っ面」と思っていたけど、いつも人に気を使って大人な振る舞いをしているんだなと、ひとつ見直した。
そんな男と嬉しそうに話している早苗。
まさか、おかしな関係に・・・ならないよな??
120 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:19:18.93 ID:7U2DNARy.net
俺の不安をよそに、二人の距離は確実に近づいていた。
トイレから戻ったとき、二人が携帯を突き合わせていたのが一番気がかりだった。
俺に気づかなくて、声をかけたときに二人して驚いた顔をしたのも怪しかった。
怖くて聞けなかったが、あれは間違いなくアドレス交換をしている。
まさか、おかしな関係に・・・なるなよ???
121 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:20:48.63 ID:7U2DNARy.net
モンモンとした気持ちを抱えて暮らしているあいだに、ハートキャッチプリキュアは砂漠の使途と決着をつけ、新番組「スイートプリキュア♪」へと世代交代をしていた。
初回から毎週、変わらず俺の部屋でみる生活をしていたが、「響と奏がギスギスしてばっかりで、嫌だなぁ。」と不満そうにこぼしている白石の横顔を見ながら、
(もしかして毎日メールしてるんじゃないか)
(すでに二人で会ってるんじゃないか)
という疑心暗鬼がたえなかった。
122 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:21:54.51 ID:7U2DNARy.net
その疑いが確信となってしまったのは、スイートプリキュアのエンディングまでのCMの最中、「そうだ、早苗さんが、また三人で食事行こうねって。」と、まるで悪びれる様子もなく白石に告げられたからだ。
俺は強烈な危機感を感じて、白石の両肩をがっしりとつかんで、真剣な目で訴えかけた。
「早苗に惚れるのだけはやめろよ!惚れられるのも、だめだからな!!」
123 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:23:09.81 ID:7U2DNARy.net
「ど、どうしたの、急に。」
「お前を信じてるからな!!!」
最初はキョトンとしていた白石だったが、必死な形相の俺を見て、ぶふっと吹き出した。
笑いながら。やつは、とんでもないことを言ったんだ。
「女の子を、好きになるわけないじゃない。」と。
124 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:24:23.72 ID:7U2DNARy.net
斜め上の返答に唖然としている俺を見て、再度キョトンとする白石。
「・・・なんだよそれ。突然のカミングアウトみたいな流れやめろよw」
半笑いの俺。疑問符の白石。
「・・・?」
「・・・??」
そっと肩から手を外す俺。
「まさか、お前・・・ゲイなの??」
その質問に返ってきた言葉は、またしても斜め上だった。
「なんで今更そんなこと聞くの?」
125 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:25:25.62 ID:7U2DNARy.net
『俺、お前の秘密知ってるよ。』
俺たちは、大きな勘違いをしていることに、この半年間、気づいていなかったのだ。
だからか、だからなのか。
プリキュア好きって言っただけで、あんなに動揺したのは。
一緒に寝るの嫌じゃないですかと言って部屋を出て行こうとしたのは。
プリキュア男子で一番可愛いのは木俣くんだと真顔で力説していたのは。
女の話を振っても、いまいち反応が悪かったのは。
ようやく、すべての謎が解けたような気がした。
126 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:26:49.72 ID:7U2DNARy.net
「あんな含みのある言い方、普通しなくない!?」
「俺は、お前がプリキュア好きだという秘密をだな!!」
「なにそれ!プリキュアが好きなの秘密でもなんでもないし!!」
「まじかよ!!?ww」
あまりの衝撃的な展開に、俺は笑いが止まらなかった。
同時に、白石とずっとべったりだったことが急に恐ろしくなり、「俺ずっと知らなかったじゃんか!!あっぶねーあっぶねーー!!ww」
そう、叫んだ。
127 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:28:40.95 ID:7U2DNARy.net
--------
-----
---
あの日以来、白石は口を利いてくれなくなった。
たしかに露骨に気持ち悪がったのは反省してるけど、無言のまま帰って、それから目も合わせようとしないなんて。
そこまで怒ることなくね。たしかに言い方は悪かったけどさ・・・。
そんな葛藤から、会社ですれ違っても素直に謝ることができなかった。
せっかく始まったスイートプリキュアも一人で見るはめになって、当然ながら朝の放映が終わっても昔みたいに白石からメールは来ないし、話題の共有ができないのは こんなにも寂しいものなのかと久々に痛感していた。
3月に公開される、プリキュアオールスターズDX3を見にいこうって約束、どーすんだよ・・・。
128 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:29:31.15 ID:7U2DNARy.net
そんな白石と再び話せるようになったのは、そう遠くない日だった。
決して、喜ばしいきっかけではなかったが・・・。
もうあれから5年も経ったという事実が一番の驚きだが、きっかけは、人々の心に大きな爪あとを残した、東日本大震災だった。
そのとき俺は外回りをしていて、白石は事務所にいた。
二人顔を合わせたときの安堵したあいつの顔は今でも覚えている。もはや口を利かないなんて言っている事態じゃなかった。
気がついたら、何事もなかったかのように、話せるようになっていた。
129 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:30:30.71 ID:7U2DNARy.net
大変不謹慎なことを言うようで申し訳ないんだが、震災後にオールスターズDX3が無事放映されたことは有難かった。
『諸事情により津波を連想するシーンはカットしてあります』と、映画館に看板が出ていて、震災の重大さを改めて感じたのも懐かしい。
映画終了後、俺たちは しばらく席を立てなかった。感動で。
近くのカフェに移動してからは、ダム崩壊のように口々に感想を言い合った。
「なぜSplash☆Starのふたりが、手を繋がずにスパイラルスタースプラッシュを出せたのか」という考察を最後に、2時間近くの、はじめてのプリキュア映画反省会が終了した。
130 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:31:23.07 ID:7U2DNARy.net
駅の改札にたどり着くまで、白石は興奮冷めやらぬ状態だった。
俺と違って、初代からずっとプリキュアを応援し続けていたから無理もない。
「石黒くんと知り合わなかったら、一生この感動を知れなかったかもしれない。本当にありがとう。」
恥ずかしげもなく、よくこんなことがいえるもんだ。
俺は急に照れくさくなって、改札をくぐって「じゃあな」と言った。
「こんな僕と、一緒にいてくれてありがとう。」
白石は、そう付け足した。
自分の電車のホームまで歩き出す。やっぱり、白石といると居心地がいい。
しばらく歩いて後ろを振り返ったら、白石は変わらずそこにいて、嬉しそうに手を振ってきた。
俺も手を振り返す。
あたたかい、春の匂いがした。
131 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:32:21.06 ID:7U2DNARy.net
変わらず夏は暑かった。
プリキュアたちがキャンプで特訓をしているころ、俺たちも一泊二日のキャンプを計画して旅立っていた。
テレビで見たラフティングをやりたくて、はるばる群馬まで来たのだ。
俺がレンタカーを運転して、白石は助手席で歌っていた。
思えば、ブラック企業にいたときから去年の夏も含めて、東京に出てきて夏にどこか友達と出かけるのは、はじめてだ。
気分は上々だった。
132 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:32:57.15 ID:7U2DNARy.net
ただでさえラフティングは俺の夏を盛り上げたのに、さらにテンションを最高潮に持っていく出来事があった。
女の子二人グループから、俺たちふたりにお声がけがあったのだ。女の子側から声を掛けてくれたのは、人生ではじめてだった。
もちろん、白石が一緒だからというのは重々承知していたが、俺はこのとき出会いに必死だったというか、荒れていたのだ。
133 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:33:39.17 ID:7U2DNARy.net
夏のはじまり、早苗にメールで復縁を匂わせたとき、
「言っとくけど、大地とやりなおす気はまったくないからね。友達としてじゃないなら、もう会わないし連絡もしないから。」
とストレートパンチの返信で希望を絶たれてしまったからだ。
そのときは冗談で済ませて事なきを得たが、いい加減、俺も早苗を吹っ切っらなきゃいけない。
新しい出会いを見つけようと、心に決めていたのだ。
世界が砂漠に覆われたまま、2010年が終わろうとしていた。
白石と知り合った春、白石の秘密を知った夏、白石との関係が変わった秋、白石と過ごした冬。
この一年は、ずいぶん白石に振り回されたものだ。
だが、この時点で俺は、気づいていなかったのだ。
2010年は、これから起きる騒動の序章だということに・・・。
■つづく■
80 :石黒@\(^o^)/:2016/02/18(木) 01:01:54.56 ID:SHhZ1Aus.net
長くてすみません!
1時になってしまったので、キリがいいここで一度離脱します!
もしスレが残ってたら、また続きみてやってください!
81 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/18(木) 01:11:08.50 ID:SHhZ1Aus.net
連投にお付き合いいただきありがとうございました!
コテだけ残していきます。
89 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 02:42:29.03 ID:TqjywQeV.net
先が気になる
92 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 07:53:22.16 ID:re1t7e/Y.net
続きが気になるぜよ
99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/18(木) 18:19:51.96 ID:t5ygaINh.net
1は高確率で女だろうが触れない方がいいのか
117 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:16:22.60 ID:7U2DNARy.net
年が明けて、2011年1月中旬。
お正月気分もすっかり取れ、サバーク博士の仮面も取れたころ、俺は早苗と待ち合わせをしていた。
いや、俺たちは、というべきか。
早苗に新年にあけましておめでとうメールをしたときに、「白石が早苗に会ってみたいってよ」と口からでまかせを言ったら、「うそ!会ってみたい!」と思っていた以上に乗り気になってくれたので、新年早々、白石に頼み込んで口裏を合わせてもらい、三人で会うことになったのだ。
118 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:17:49.61 ID:7U2DNARy.net
白石おすすめのカフェで、三人でお茶をした。
早苗がおしゃれをしているのを見るのは久しぶりで可愛かったし、楽しそうに話すところを見るのも久しぶりで、懐かしい気持ちになった。
同時に、その笑顔は白石に向けられているという事実が、寂しくもさせた。
昔はこんな風に俺に笑いかけてくれたなぁ・・・もう過去なのか・・・と悲しくなった。
理由はなんであれ、会ってくれるんだから それにこしたことはない。
そんな軽い気持ちでセッティングしたんだが、少し後悔していた。
まさか、おかしな関係にならないよな?
119 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:18:39.11 ID:7U2DNARy.net
白石を見て、気づいたことがあった。
常に笑顔を絶やさないし、本当に細かいところに気がつく。
そりゃ俺とふたりでいるときも笑顔だし いつも気が利くんだけど、冗談を言ったりスネたり、子どもっぽい一面も見せることがあるんだが。
そうか、白石のことをよく知るまでは「上っ面」と思っていたけど、いつも人に気を使って大人な振る舞いをしているんだなと、ひとつ見直した。
そんな男と嬉しそうに話している早苗。
まさか、おかしな関係に・・・ならないよな??
120 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:19:18.93 ID:7U2DNARy.net
俺の不安をよそに、二人の距離は確実に近づいていた。
トイレから戻ったとき、二人が携帯を突き合わせていたのが一番気がかりだった。
俺に気づかなくて、声をかけたときに二人して驚いた顔をしたのも怪しかった。
怖くて聞けなかったが、あれは間違いなくアドレス交換をしている。
まさか、おかしな関係に・・・なるなよ???
121 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:20:48.63 ID:7U2DNARy.net
モンモンとした気持ちを抱えて暮らしているあいだに、ハートキャッチプリキュアは砂漠の使途と決着をつけ、新番組「スイートプリキュア♪」へと世代交代をしていた。
初回から毎週、変わらず俺の部屋でみる生活をしていたが、「響と奏がギスギスしてばっかりで、嫌だなぁ。」と不満そうにこぼしている白石の横顔を見ながら、
(もしかして毎日メールしてるんじゃないか)
(すでに二人で会ってるんじゃないか)
という疑心暗鬼がたえなかった。
122 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:21:54.51 ID:7U2DNARy.net
その疑いが確信となってしまったのは、スイートプリキュアのエンディングまでのCMの最中、「そうだ、早苗さんが、また三人で食事行こうねって。」と、まるで悪びれる様子もなく白石に告げられたからだ。
俺は強烈な危機感を感じて、白石の両肩をがっしりとつかんで、真剣な目で訴えかけた。
「早苗に惚れるのだけはやめろよ!惚れられるのも、だめだからな!!」
123 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:23:09.81 ID:7U2DNARy.net
「ど、どうしたの、急に。」
「お前を信じてるからな!!!」
最初はキョトンとしていた白石だったが、必死な形相の俺を見て、ぶふっと吹き出した。
笑いながら。やつは、とんでもないことを言ったんだ。
「女の子を、好きになるわけないじゃない。」と。
124 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:24:23.72 ID:7U2DNARy.net
斜め上の返答に唖然としている俺を見て、再度キョトンとする白石。
「・・・なんだよそれ。突然のカミングアウトみたいな流れやめろよw」
半笑いの俺。疑問符の白石。
「・・・?」
「・・・??」
そっと肩から手を外す俺。
「まさか、お前・・・ゲイなの??」
その質問に返ってきた言葉は、またしても斜め上だった。
「なんで今更そんなこと聞くの?」
125 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:25:25.62 ID:7U2DNARy.net
『俺、お前の秘密知ってるよ。』
俺たちは、大きな勘違いをしていることに、この半年間、気づいていなかったのだ。
だからか、だからなのか。
プリキュア好きって言っただけで、あんなに動揺したのは。
一緒に寝るの嫌じゃないですかと言って部屋を出て行こうとしたのは。
プリキュア男子で一番可愛いのは木俣くんだと真顔で力説していたのは。
女の話を振っても、いまいち反応が悪かったのは。
ようやく、すべての謎が解けたような気がした。
126 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:26:49.72 ID:7U2DNARy.net
「あんな含みのある言い方、普通しなくない!?」
「俺は、お前がプリキュア好きだという秘密をだな!!」
「なにそれ!プリキュアが好きなの秘密でもなんでもないし!!」
「まじかよ!!?ww」
あまりの衝撃的な展開に、俺は笑いが止まらなかった。
同時に、白石とずっとべったりだったことが急に恐ろしくなり、「俺ずっと知らなかったじゃんか!!あっぶねーあっぶねーー!!ww」
そう、叫んだ。
127 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:28:40.95 ID:7U2DNARy.net
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あの日以来、白石は口を利いてくれなくなった。
たしかに露骨に気持ち悪がったのは反省してるけど、無言のまま帰って、それから目も合わせようとしないなんて。
そこまで怒ることなくね。たしかに言い方は悪かったけどさ・・・。
そんな葛藤から、会社ですれ違っても素直に謝ることができなかった。
せっかく始まったスイートプリキュアも一人で見るはめになって、当然ながら朝の放映が終わっても昔みたいに白石からメールは来ないし、話題の共有ができないのは こんなにも寂しいものなのかと久々に痛感していた。
3月に公開される、プリキュアオールスターズDX3を見にいこうって約束、どーすんだよ・・・。
128 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:29:31.15 ID:7U2DNARy.net
そんな白石と再び話せるようになったのは、そう遠くない日だった。
決して、喜ばしいきっかけではなかったが・・・。
もうあれから5年も経ったという事実が一番の驚きだが、きっかけは、人々の心に大きな爪あとを残した、東日本大震災だった。
そのとき俺は外回りをしていて、白石は事務所にいた。
二人顔を合わせたときの安堵したあいつの顔は今でも覚えている。もはや口を利かないなんて言っている事態じゃなかった。
気がついたら、何事もなかったかのように、話せるようになっていた。
129 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:30:30.71 ID:7U2DNARy.net
大変不謹慎なことを言うようで申し訳ないんだが、震災後にオールスターズDX3が無事放映されたことは有難かった。
『諸事情により津波を連想するシーンはカットしてあります』と、映画館に看板が出ていて、震災の重大さを改めて感じたのも懐かしい。
映画終了後、俺たちは しばらく席を立てなかった。感動で。
近くのカフェに移動してからは、ダム崩壊のように口々に感想を言い合った。
「なぜSplash☆Starのふたりが、手を繋がずにスパイラルスタースプラッシュを出せたのか」という考察を最後に、2時間近くの、はじめてのプリキュア映画反省会が終了した。
130 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:31:23.07 ID:7U2DNARy.net
駅の改札にたどり着くまで、白石は興奮冷めやらぬ状態だった。
俺と違って、初代からずっとプリキュアを応援し続けていたから無理もない。
「石黒くんと知り合わなかったら、一生この感動を知れなかったかもしれない。本当にありがとう。」
恥ずかしげもなく、よくこんなことがいえるもんだ。
俺は急に照れくさくなって、改札をくぐって「じゃあな」と言った。
「こんな僕と、一緒にいてくれてありがとう。」
白石は、そう付け足した。
自分の電車のホームまで歩き出す。やっぱり、白石といると居心地がいい。
しばらく歩いて後ろを振り返ったら、白石は変わらずそこにいて、嬉しそうに手を振ってきた。
俺も手を振り返す。
あたたかい、春の匂いがした。
131 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:32:21.06 ID:7U2DNARy.net
変わらず夏は暑かった。
プリキュアたちがキャンプで特訓をしているころ、俺たちも一泊二日のキャンプを計画して旅立っていた。
テレビで見たラフティングをやりたくて、はるばる群馬まで来たのだ。
俺がレンタカーを運転して、白石は助手席で歌っていた。
思えば、ブラック企業にいたときから去年の夏も含めて、東京に出てきて夏にどこか友達と出かけるのは、はじめてだ。
気分は上々だった。
132 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:32:57.15 ID:7U2DNARy.net
ただでさえラフティングは俺の夏を盛り上げたのに、さらにテンションを最高潮に持っていく出来事があった。
女の子二人グループから、俺たちふたりにお声がけがあったのだ。女の子側から声を掛けてくれたのは、人生ではじめてだった。
もちろん、白石が一緒だからというのは重々承知していたが、俺はこのとき出会いに必死だったというか、荒れていたのだ。
133 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:33:39.17 ID:7U2DNARy.net
夏のはじまり、早苗にメールで復縁を匂わせたとき、
「言っとくけど、大地とやりなおす気はまったくないからね。友達としてじゃないなら、もう会わないし連絡もしないから。」
とストレートパンチの返信で希望を絶たれてしまったからだ。
そのときは冗談で済ませて事なきを得たが、いい加減、俺も早苗を吹っ切っらなきゃいけない。
新しい出会いを見つけようと、心に決めていたのだ。
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